郷原信郎著「思考停止社会」

なかなか面白い本だったぞ。
水戸黄門の印籠を見た群衆が無条件に地面に平伏すように、
今の日本社会では「法令遵守」がとにかく徹底されているから、
「捏造」「改ざん」「隠蔽」といった行為が発覚すると、
その前後関係や背景を深く考察することなく、
マスコミや世の中は、その企業を無条件に非難するる。
著者が問題視しているのは、こうした「法令」が登場した瞬間に、
とにかく法令遵守が最優先され、「思考停止」になってしまう日本の状況。
仮に現状にそぐわない法令があるなら法令を変えれば良いでしょ、と。
考えもせず過度な法令遵守は社会をダメにしますよ、と。
食品偽造、年金問題、村上ファンドの経済司法問題や耐震偽造問題など、
法令遵守が最優先され、現実とはかけ離れた過度な報道やバッシングがされた
様々な事例が紹介されている。
結構、知らなかった驚きの事実があった。
無条件な法令遵守=思考停止になってしまう原因として著者は、
社会における「法」の存在が欧米や日本では大きく違うことに起因していると言う。
確かに欧米は法社会だよね、それは何となく分かる。
欧米では社会の中心的な存在として法がある。
多くの判断基準として生活に密接に関わる場面で法が登場して、法による問題解決がなされる。
一方、これまでの日本における「法」は社会の周辺部分に存在する、
「これ以上は超えてはダメな壁」だったと。犯罪とかね。
だから一般の人にはあまり馴染みのないものだし、
また「とにかく法律は守るべきもの」という強い存在になっている。
社会の内部で起きた問題解決は慣行や話し合いなど法以外の方法での問題解決だった。
でも近年の経済構造改革によって法整備が進んで、
社会の中で法律が登場するようになったと。
でも人々の法に対する意識は昔のままだから、無条件な法令遵守=思考停止に陥っている。
ううん、よく分かる。その感覚。
さらにその思考停止状態は法令遵守にとどまらず、
企業の「隠蔽」「捏造」「改ざん」といった法が及ばない
企業行為まで無条件に非難されていることが問題だと。
まあ、それはイコール、マスメディアの大きな問題なのだが。。。
たぶん、こういった過度な遵守意識が日本がブレイクスルーできない
要因のひとつなんだろうなあ、とあらためて強く思う。
震災という極めて大きな社会的事情により、
本当に本当に価値観やシステムを変えなければいけない時。
おそらく法律も、かなり柔軟にそしてスピーディーに
変えていかなければならないんだろう。
そして自分個人のレベルで考えてみても、
今まで当たり前だと思っていた行動や、
無条件に守ってきたルールさえ、
一旦フラットな目で見直して、いくべきだなあと。

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