鴻上尚史著「不死身の特攻兵」

特攻兵として9回出撃し、
生きて日本に戻ってきた佐々木友次さんの物語。

腕の良い操縦士を1回の体当たりで
死なせることは到底合理的ではないし、
そもそも戦艦の甲板に機体ごと体当たりするよりも
爆弾投下のほうが成功率も威力も高いというのに。

なぜ特攻隊なんてものが存在したのか、
ほんと不思議だったんだけど、
この本で、そのメカニズムが良く分かった。

これは普通にビジネス社会にも存在する力学そのもの。

 

ポーズ。

敵を倒すためでなく、
味方(天皇、国民、軍隊)に対するポーズ。

こんなことまでやっているんだから、
僕ら軍隊ももっと頑張らないと、
という士気高揚であったり、

こんなことまでやっているんだから、
天皇、もう負けを認めましょうよ、
というメッセージであったり、

目的に従うのではなく、組織に従った結果だ。

普通にビジネス社会において、
あんまやる意味ないけど、
まあ仕方ないからやる、って結構ある。

組織の維持のため、
顔を立てるため、とかとか

たいていは人間関係や感情が発端になってたりする。
結構どうでもよい。

日本人の特性である
集団帰属意識や同調意識の強さが根底にある。

あ、日大アメフト部の件も、まさにこれ。
特攻隊と何ら変わらない。

 

「真実は当事者の中にある」

部下に特攻に行かせ、生きて戻ってくると罵倒しつつ、
ちゃっかり部下にも内緒で敵前逃亡する最低な冨永司令官。
やたら儀式を大切にするがために、
その儀式のために戦中にマニラに渡った岩本隊長の命を奪った。
この司令官は戦争の当事者になっていない。

戦後、あらゆる人があらゆる立場で戦争について書いてるけど、
本当の真実は当事者の中にしかない。

 

「空を飛ぶことが好き」

命を落とすかもしれない戦地に向かう飛行でも、
海峡を渡る時に心躍らせるほど、
空を飛ぶことが大好きだった佐々木さん

その気持ちこそ、
組織に従わず、目的に従う強い意志と、
奇跡と運命を呼び込んだように思う

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