正しい質問の仕方を知らなければ、
何も発見することはできない。
〜W・エドワーズ・デミング~
ジョブ理論は、
「問い方よって見えてくる世界が変わる」ことが全てだ。
どんなジョブ(用事、仕事、問題)を片付けたくて、
あなたはそのプロダクトを雇用するのか?
そう問うことで真の顧客理解に繋がる。
顧客が欲しいのはドリルではない。
穴が欲しいのである。
という有名なフレーズがある。
プロダクトそのものではなく、
顧客は便益が欲しいのだ、
という消費の本質をうまく表現した
例えだと思う。
他にも、「飛行機」と「テレビ会議」は競合関係にある。
どちらも海外の取引先と顔を見ながら商談できるという便益をもたらすから。
とかっていう事例もよく聞く。
顧客の便益を奪い合うのがマーケットの本質であり、
それは当然商品カテゴリーを大きく超えた競争環境。
その理解を深めるための問いとして、
この「ジョブ」という考え方はしっくりくる。
この本の序盤にあった、
ミルクシェイクの事例は
ドリルに並び自分の中で記憶に刻まれそうな事例。
なぜあなたは、今ミルクシェイクを雇用したのか?
(どんなジョブを解決したかったのか?)
そう聞かれた人は、
・仕事先まで退屈な運転を紛らわせたい
・昼食までの時間を腹持ちさせるものを摂りたい
・運転しながら手に取れるものがよい
とかとか。
運転しながらだとベタベタして
食べたべずらいドーナツでもなく、
パサパサでドリンクが欲しくなるベーグルでもなく、
すぐ食べ終わるバナナでもなく、
ストローで吸いづらく時間のかかるミルクシェイクが
実はこれらジョブを解決するのに一番良いのだ、と。
ジョブ=
ある特定の状況で人が遂げようとする進歩。
※進歩=今よりもっとよくしようと思う気持ち、くらいなもの
たぶん、「ある特定の状況」っていうのが肝で、
時に人はちょっと状況が違うだけで、
ミルクシェイクを選ばず、ドーナツを選ぶかもしれない。
いまこの状況で解決したい真のニーズは何か、
享受したい便益は何か?という問いは、
顧客がその商品を選ぶ理由の輪郭をくっきりとさせる。
ジョブのために雇用するという問いは、
・雇用の裏には解雇がある(いま所有するプロダクトに対する不満)
・無消費(何も雇用しない)
という選択肢をも浮かび上がらせてくる。
プロダクトの機能的側面だけでなく、
感情的側面、社会的側面も考慮した、
ストーリーを描く必要がある。
唯一、ジョブ=解決したい課題、
っていうソリューション的なプロダクトだけでなく、
楽しい体験をしたい、満足感を得たい
といった気分的な便益を満たすプロダクトでも
この問いが当てはまるか?が、ちょいと難しいかなと思った。