森岡毅著「苦しかったときの話をしようか」


森岡さんが、
就活を目前にした実娘のために
ビジネスマンのキャリア形成について
愛情たっぷりに書き下ろした本。

となれば、
面白くないはずがない。

超期待しつつ、なかなか(積読の順番待ちで)読めず、
ようやくゆっくりと読めた。

期待に違わぬ内容で、
就活生だけでなく、ほぼ森岡さんと同世代のオッサンでも
ずっしり心に刺さる物語。

いつか読み返すために、深めにまとめる。


Self Awareness
強みとは、好きな動詞である
パースペクティブ
MY BRAND
後ろ向きな仕事と付き合う
不安とは、進軍ラッパである
弱点と向き合う

Self Awareness

ビジネスの世界で生きていくには、
何より自分の強みを知っていること、Self Awarenessが大事。
当たり前だ。自分が商品なのだから。
(でも、日本の教育で極めて不足している部分でもある)

会社がお金を払ってくれる対象は、
自身の強みに対して、である。
なぜなら、その人の強みからしか、成果は発揮されないから。

逆に、弱みを克服する代金を会社が払ってくれるわけではない。
強みと真逆にある弱みの改善に
貴重なリソース(時間や金)を割くのはムダでしかない。

だからこそ、強みを認識し、強みを磨き続ける。それがビジネスマンの本質。
強みを磨き続ける理由は、近しい強みの人がたくさん居るから。
結局ビジネスの世界は相対的な争いである。
強みがあればいきなり際立って輝くわけではない。

花屋の店先に並んだいろんな花は、それぞれがOnly Oneだが、
実はその花たちは、店先に並ぶ手前で、市場で間引かれ
商品化できなかった他の同種の花との勝負に勝った
No.1の花たちでもある。

いきなりOnly Oneを目指すな。まずはNo.1にならねば際立たない。
奇しくもイチローもまったく同じことを言っていた。

強みは磨き続けねばならない。

強みとは、好きな動詞である

強みを知るには、好きだったことを思い出すが手っ取り早い。
好きなことと、自身の強みは相関が高いんだ、きっと。

過去、自分がチャレンジことで、成果が出た思い出は、
きっと良い思い出として残っている。それが「好き」という感情になる。
成果が出たのは、その人の強みが生かされたから。
好きなことは、何度でもやる。磨かれる。

つまり、強みとは、つまり好きな動詞である。

自身の好きな動詞の傾向により、
森岡さんはざっくり3つのタイプに分けた。
ざっくりたった3つに分けちゃうことの汎用性の高さはさすがです。
Thinkの人、Communicationの人、Leadershipの人。

自分はTとLが半々くらいだな。Cは明らかに弱い。

もうひとつ、
強みとは、その人の特徴と、それが生かされる文脈とセット、である。
特徴とはその人の特性の凹凸であり、凸の部分は状況次第では
プラスにもマイナスにも働く。
凸が正しく働く環境で生かされてこそ「強み」といえる。
強みと弱みは環境次第で紙一重である。


パースペクティブ

自分は、あの頃の何も知らなかった自分を恥じる。ことがよくある。
20代の頃は10代の自分を恥じ、30代の頃は20代の自分を恥じ、
そして今40代で当然30代の自分を恥じる。
ポジティブに言えば、時を重ね視野が広がっている、
という当たり前のことなのだが。

この自分が認識できる世界=パースペクティブを、
意識して今以上に広げていきたい。

理解すること、とは、
何が理解できて何が理解できていないかを、理解することに他ならない。

もう一歩進んで、
その理解の線引きがどのあたりにあるのか、
あるいは、理解できていないことを理解するためには、
なにが分かればよいのか、
そこを踏み込んで知的探求を進められれば、パースペクティブは広がる。

パースペクティブの広がり=選択肢の広がり、である。
パースペクティブがなければ、そこにあるのに見えないのだ。

MY BRAND

キャリアとは、自分をマーケティングする旅である。

通常のブランディング作業と同様に、
自分というブランドを定義する

・WHERE:どの市場で戦うのか
・WHO:ターゲットは誰か
・WHAT:提供価値(便益)は何か、その根拠は?
・HOW:どうやって提供するのか

相対的にしっかりとした価値か?根拠は十分か?
際立っているか?自分の本質を偽っていないか?

そして、そのブランド定義が定まったならば、

一貫した行動をとり、そのブランドを棄損する逆の行動をとらないこと。
そしてその提供価値を発揮する成果にこだわること。

ブランドは維持することこそ難しいという当たり前の感覚を、
自分のキャリア形成にも当てはめて自分事化してとらえることだ。

人間は自己保存の動物。
このブランドを信じれば自分が安心できる、という人物について行く。

 

後ろ向きな仕事と向き合う

日頃、仕事をしていると、
やりたくない仕事、部下にやらせたくない仕事が発生する時がある。

それらは、
成果が出ないことが見えている仕事
本質的に顧客のためにならない仕事
仕事のための仕事
とかだ。

自分が信じられない仕事を部下に
与えることはできない。

今でも、そんな仕事が来た時は、
信じられる解釈、可能性を見出すまで議論するようにしている。

しかーし、
無力なサラリーマンたるもの、そんな仕事を
どうしても抱えねばならない時もある。

そんな時はどうするか。

部下と同じ立場(その仕事に納得できない立場)でその仕事を否定した
発言をしても始まらない。リーダーが弱音を吐いては、
その感情は伝染して、全体のモチベを下げるたけ。

プロたるもの、一旦仕事を引き受けた限りは、
全体の立場で、最善の言動を尽くす。

 

不安とは、進軍ラッパである

人間には自己保存の本能がある。
新しいチャレンジをし、新しい環境に身を置くことはストレスになるので、
人間は本能的にそのチャレンジを「妨害」しようと「緊張」という状態に陥れる。本能的に自分が自分を邪魔するのだ。

だからこそ、新たなチャレンジが大きいからこそ、不安と緊張も大きくなる。

言い換えれば、不安とは、本能的な妨害を克服し、大きなチャレンジをしようとする自身が鳴らしている「進軍ラッパ」のようなもの。

不安であればあるほど、自分は勇敢なのだ。

失敗しても死なない。
失敗しないで終わる人生ほど、大失敗なものはない。

それくらいのつもりで不安を楽しんだほうが楽だ。

弱点と向き合う

人が弱点を克服できるのは、自身の強みの周辺領域だけ。
強みを強化する方向であれば、その弱点は克服すべき。

強みと正反対の弱みの克服にリソースを注ぐのはリターンが少なすぎる。
会社が給料を払う対象は、自身の強みだけである。

むしろ、たくさんの強みの凸が重なり合って、総体としてパーフェクトな活動体を作り上げたほうが良い。それがリーダーとしての役割だ。

もうひとつ。
人間が弱点を克服するため、行動を変えようと思ったとき、それが継続せずにへこたれる理由は、

変わろうという意識変化と実際の行動変化とのタイムラグに耐えられないから、である。

行動変化は、神経回路や筋肉の動きを変えるものだから、時間がかかって当たり前。
だから、人間はすぐに行動変化はできないものだと認識し、
変化には時間がかかることを最初から織り込んで、
継続して努力することである。
小さな変化を自分で褒めたたえ、一歩ずつ進歩していくしかない。