平野啓一郎著「『カッコいい』とは何か」


日々の生活において、「言葉の定義」が共通認識できていないと、当然のことながらコミュニケーションはうまく行かない。

朝の挨拶で「こんばんは」は、変である。

けれど、ビジネスの場で普段接している人たちとの会話では、実は人ぞれぞれの定義が違いそうな、曖昧だけど暗黙で使われている共通言語がたくさん転がっている。

例えば、いま無意識に「転がっている」と書いたが、実際に言語が床に転がっているわけではない。たくさん存在していることの比喩的表現として、何の違和感もなく「転がっている」と書いた。きっとこれで伝わると思っている。

特にビジネスの世界では、「戦略」「新規顧客を攻める」「お客様を守る」とか、戦事用語が比喩的に漠然と使われることが多いが、戦略って何?と掘り下げて聞いてみると、うまく答えられなかったり、人それぞれ定義が違ったりあるいは、同じ人の頭の中でもその時々で意味が変わったりする。

 

定義をちゃんとする、だけでも、コミュニケーションの齟齬は当然減るし、それがすなわち仕事のアウトプットの品質を高めると思う。

なぜなら、仕事のアウトプットは(我々の広告業界ではなおさら)、言葉の積み重ねでできているからである。まるでレゴブロックのように緻密に言葉が組み合わさってひとつの形をなす。言葉の定義が揺らいでいては、誰が見ても同じキレイな形にならない。

という、ちょっとした問題意識があって、この本。
言葉の中でも、捉え方が人それぞれの際たる形容詞「カッコいい」。

しかし、よくもまあ平野啓一郎さん、「カッコいい」というひとつの言葉だけで、こんなに分厚い本書けるなあ、と尊敬。ななめ読み。

本題の「カッコいい」とは何かの答えは、あらゆる角度から語っていて、それはそれでフムフムと思ったが、

この本で得たこととしては、言葉を定義、言語化するアプローチの手法。
自分なりにまとめてみると、5つくらいかな。

①ルーツを探ってみる
その言葉の語源と意味の変遷を調べてみる

使われ方を出し尽くす
言葉はいろんな使われ方、をする。それを出し尽くしてみる

似ている言葉と比べて違いを見つける
かわいいとの違い、クールとの違い、など比較のアプローチが定義をシャープにしてくれる

④対義語や裏側の意味からもアプローチする
今回の本でいれば「カッコ悪い」とは何か、を考えてみることである

⑤分解して別の言葉に言い換える
言語化そのもの。これができれば完成

この5つのアプローチで、他の言葉も言語化してみようかなー。