山口周著「世界のエリートはなぜ『美意識』を鍛えるのか?」


変化が激しい世の中だからロジカルシンキングはもう限界で、イノベー
ションを起こすには自らの審美眼を頼るしかない時代だよ!
っていう結論だよなーきっとこの本は。

と予想しながらも、

たまに美術館行っても誰よりも早く観終わって一周しちゃう自分だから、
少しは美術鑑賞をビジネスに活かせるコツでも見つかれば、、、
ということで、読む。

■リーダーが美意識を鍛えている3つの背景
・論理的意思決定が限界だから
ロジカルシンキングが高度化すればするほど同じ正解にたどり着く。正解のコモディティ化。戦略で差別化できなくなっている。

・自己実現的消費がトレンドだから
消費のファッション化。リーダーの美意識の水準が企業の競争力を左右する

・時代変化にルール(法整備)が追い付いていないから
リーダーの倫理観が意思決定の拠り所になる

■直感と感性だけが重要!と言っているわけではない
あくまで「論理と直感」「理性と感性」のバランスが大事ということ。
「アート」「サイエンス」「クラフト」の3つの要素をバランスよく配合して意思決定すべき。
ただ、アカウンタビリティ(説明力/説得力)は、
サイエンス、クラフト > アート

どうしても意思決定の世界ではアートは弱い。
「なんとなくこっちが良い」では人は納得しないから。

だからこそリーダーがアートを重視するか、あるいはアートが尊重される組織の仕組みを作るしかない。
柳井さんと可士和さんの関係のように、リーダーの側近としてクリエーターが起用される例はよくある。古くは信長と千利休の関係。

■罪の文化、恥の文化
欧米は罪の文化。判断基準は自身の良心にある。(神様が見ている)
一方で日本は恥の文化。周りの目がどう判断するかが判断基準。だから極端な話、悪事を働いても誰も見ていなければ大丈夫、な世界。

いかに真・善・美の判断基準を内在させるか、がこれからは大事

■未来を変えるために
会社組織でも業界でも政治でもなんでも、既存のシステムに適応した人(つまりエリート)だけがそのシステムを内側から変えられる。外野の人がワーワー言っても結局は何も変わらない。
だからこそ既存システムに恩恵を受けているエリートが、自らの美意識を尊重し改変していかねばならない。

■芸術と意思決定
ビジネスリーダーの必須条件は「セルフアウェアネス」。いかに自分の強みや特徴、そして自分のコンディションに敏感であるか。
その感度は脳の「島皮質」(感度)、「前頭前野」(美意識)が成長することで伸びる。この脳の部分は芸術を美しいと感じる機能でもある。
つまり芸術を美しいと感じることと、ビジネスにおける高度な意思決定は同じこと。だからこそ、美意識を鍛えることが有効。

■美意識の鍛え方
・絵画
なんの先入観や予備情報を用いることなくフラットに観ることが有効(VTS:Visual Thinking Strategy)。過去の情報をパターン認識化することは効率的であるし、それこそが経験値であるが、一方で失語症のように常に過去経験をアンラーンし、常に白紙でフラットな情報取得をすることが今の時代には有効なのかもしれない。

・哲学
過去の哲学者の主張が、たとえば間違いであったと証明されたとて、その主張を紡ぎだしたプロセスや時代背景を知ることは有効。なぜなら哲学とは、その時代を疑い続けた歴史であるから。哲学とロックは同じ。欧米ではMBAの前提知識として哲学を学ぶ

・文学
メタファーを学ぶ。メタファーは単なる手段ではなく、戦略を研ぎ澄ます武器である(優れたリーダーは喩えるフレーズで分かりやすく方向付けする)