この本が出版されたのは2009年。
つまり、SNSが一般化する前に書かれている。
「多様性を認め喜ぶことで、何とかこの厄介な世界を生き延びたい」というのが著者の執筆動機だと書かれているが、この厄介さは、この10年できっと拍車がかかっていると思う。
「生きるのが窮屈なら、たとえ緩くても良いから2つ以上のコミュニティに関わりなさい」と、最終章で書かれた著者からのこのメッセージは、おそらく中高生や若者に向けて発せられたと思うが、今の時代であれば、このメッセージ通りに行動に移すハードルはかなり下がっている。一方でそのコミュニティから外れてしまう恐怖や落ち着きのなさ、といった気持ちは逆に一層高まっているだろう。
また、著者が指摘する、「帰属意識を感じるためには、他者を攻撃することでしか得られない」という現象も、このネット社会でさらに拍車がかかっていることは間違いない。
1つの対象を攻撃し、攻撃する者同士の一体感が満足を生む。そしてその満足を維持するためには、他者を攻撃し続けるしかない。
とかとか、「空気と世間」のありかたも、この10年ですごく変わったことを実感した。
もともと定義が曖昧な言葉がテーマ。
特に、この著書における「世間」の定義は「利害関係のある周囲の人の総称」としている。
この定義だと、自分の中では「コミュニティ」という言葉のほうが近い。逆に自分の中の「世間」は、ほぼ「社会」と同義。
この定義がしっくりこなかったから、文章は読みやすくても、あまりスムーズに読み進めることが出来なかった。
その分、自分の体験と照らし合わせがなら、ページをめくる手をとめて何度も物思いにふけながら読み進めたので、読み終えるまでにめっちゃ時間がかかったw