段戸川倶楽部の話その1

昨年から、「段戸川倶楽部」に参加している。

段戸川倶楽部とは、愛知県北東部を流れる矢作川水系・段戸川のキャッチ&リリース区間をより良い渓流釣りの場所にしていくための、釣り人による組織。

釣り人同士で監視しあってC&R区間を密漁から守っていこうね、放流や川の維持管理も出来るだけ手伝っていこうね、という組織だ。

この倶楽部には自分にとっては2つの意味があると思っていて、
1つは、自分の趣味を楽しむという視点からいえば、同じ趣味仲間と集まれて情報交換も出来て単純に楽しい。特に僕がやっている「テンカラ釣り」はやっている人も多くはないので、この倶楽部の参加を通じていろんな人と出会えてとても嬉しい。
もう1つの意味は、趣味を楽しみながらも、川を守り、さらに発展させることに少しでも貢献できるということだ。

普通のレジャーの感覚だと、釣り人からすれば「こっちは遊漁料払っているんだから、漁協さんちゃんと釣れる量の魚を放流してね」とまるで釣り堀のように漁協に対価を求める考え方も分からなくもない。しかし、いまの日本の河川の状況を考えると、釣り人自らが釣りが出来る環境を整えていくことはとても意義深いと思うし、この動きがもっと加速せねばならないと思う。

この意義を理解するためには、現状の日本の川の状況や漁協の状況を知る必要がある。

ちなみに、段戸川を管轄しているのは「名倉川漁協」。段戸川倶楽部は名倉川漁協からの正式な依頼をもとに運営を行っている。
名倉川漁協に限らず、今は全国的にどこの漁協(海の漁業協同組合とは異なる「内水面漁協」)も河川の維持はもちろん組合の運営維持すら難しい状況にある。

日本の河川はここ数十年の間にダムや堰堤や護岸工事が進み、魚が棲みにくくなっていることに加え、流域人口の減少と高齢化により産業としての衰退が進んでいる。下のデータだと、産業としては最盛期の1/5近くに減少している。


※水産庁「内水面漁業・養殖業をめぐる状況」(2020年4月)から引用

水産庁の定義によれば、「内水面漁業」とは、川や湖などの内水面で行われる漁業や養殖業を指していて、「内水面」という定義自体は、漁業に限らず釣り等の遊漁を始めとするレクリエーションの場としても位置付けられている。

ここで大事なポイントがあって、「内水面漁協」には法律において大きな役割と義務が課せられている点。

内水面(川や湖)は、海と比べれば圧倒的に水産資源量は少ない。当然だ。一方で、立地的には海よりも漁が容易なので資源が減少する可能性が高い、とされている。

そのために実は以下の法律がある。(以下文章水産庁HPから拝借)
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漁業法(昭和 24 年法律第 267 号)に基づき、内水面において漁業権(第5種共同漁業権)の免許を受けた内水面漁協は、資源が枯渇しないよう水産動植物の増殖義務が課せられている。
これにより、内水面漁協は、釣り人の遊漁料や組合員から納付される漁業権行使料を用いて、漁業権対象魚種の種苗放流や漁場の管理等を行い、内水面の生態系と生物多様性に配慮しながら、水産資源の維持増大と遊漁を含めた利用の両立を図る役割を担っている
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つまり漁協は「自らの力で魚を増やさなければいけない」と法律で決まっているのだ!

しかし、全国の内水面漁協は収益(遊漁料)も限られているし、組合員はそもそも専業で魚に関わっているわけではないし、今ではどの河川流域も人口減少と高齢化が進み、維持管理の時間も体力もなくなっている。ヤバい。

そこに、段戸川倶楽部のような「釣り人自身で良い川を作る仕組み」の意義がある。

現在、倶楽部の参加者は35名。

釣りをすること自体が密漁防止の監視になるし、これだけの人数が入れば協力しあって放流作業や川の整備も出来る。

これからも自分に出来る範囲で協力をして盛り上げていきたい。

この話、たぶん続く。