村上春樹著「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

やれやれ。
本作のような非現実性要素の少ない村上作品は、まるで初老のマスターが一人で営むウイスキーバーで焼かれた、バジルを入れ忘れた薄いピッツァのようで、なんだか少し物足りない。
でもそれは、僕がどうにか出来るものでもなく、それを受け入れるだけのことだ。世界はそうやって回っている。
なんて。
ファンタジーな小説のほうが好き。「世界の終わりと」とか「ねじまき鳥」がいい。
ただ印象的だったのは、名古屋独特の閉鎖性とか、フィンランドの空気感とか、街の雰囲気がさりげなく描かれていたこと。
若い時にたくさん読んだ村上作品は、どれも「自分は何でもできる!」という超ポジティブな読後感になったものだが、
さすがにこの歳で読んでも、そんな気分にはならないが、
とはいえ、ストーリーはどうでも良くて、あいかわらずの村上ワールド(自分にとってのサードプレイス)に行けただけで十分。

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